男、学びの果てを目の前にし、終ふる日までいとまなく念入りて学ぶべくつとめけり。起きて目や覚めぬ間から日のかたぶくまで草子みつめたりなむありける。
かかる日、ことも考えず窓の外ながめけるに、とりの飛び立つを見けり。「あれなむほととぎす」とて、刻まれける時の一秒いちべう、苦しう数へけり。やうにはるかとほくまで飛ばなむとて、男、うつむきければ、さる時、気や狂ひけむ、つくゑの上に置きたるホッチキス、つばさ生えぬるにぞ気づきける。思ほえず、さるホッチキス、つばさ広げば、さき見けるとりのごとく飛び立ちけり。パチンと音ならしつつ、開きたる窓くぐりぬけ、知らぬ国に向かひて空に消えにけり。ワケわからず、男かくなむ。
なきごえはほっちきすかなかみのなるごとくえとめぬものにぞありける
学びなんぞあきらめ、一夜しづかに眠れば、狂ひたる気やもとに戻りけむ。
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