いとまぶしう晴れたる日、男、町にいでゐて、つれづれなるままにさまよひけり。深う息して、春の匂ひさへ風にただよひければ、ぢきに冬も明くべしと思ひて、男、心地よく歩きたりけり。
されど、神は気まぐれなり、歩くほどに空に雨雲ぞいでぬる。雨宿りせむとて、男、喫茶店にて寄れば、珈琲たのみて、窓辺に近う座りけり。苦みをたしなみつつ、男、聞こゆるは電脳のたたかるるパチパチ、ならびてかすかなるピアノのみ。いづらもやうに鍵盤と呼ばるるものなれど、響きをばかやうに違ひて感じつと思ひて、また珈琲のひとくち飲みけり。雨の道を濡らするを、行き交ふ人々の歩きいそぐを、そこはかとなくながめて、男かくなむ。
世をながめ雨の日に聴くソフトジャズ
男、傘は持たずいでゐたれば、日暮れを待てど、雨のやむべくもあらず。うち疲れて、男、ぬるぬるかへりにけり。
© 2005-6 amake