正月よりふた月立ちぬるとき、男、学びのそのより文をおこされけり。さる文にて、「学士たるものは社会のいとなみなど知るべし。さらずは学びの果つる日なからむ」と記されたりけり。されば、男、この期に及びて敗れじとて、苦しうまでに、草子やら式やらにて没頭して、ひたみちにつとめけり。日暮しまめに学びけるうちに、知らず知らず時は十四日になりければ、たまに文などやりたる人の、「かの国人たち、醒めても酔ひても、恋ばななどせぬは、いかに不思議なり。物語、ひとつ聞かせなむ」といひけるに、今年もまたひとり過ぐせる男かくなむ。
なにゆゑに涙ながれつ恋の日はうれしやさびしよろづにありけり
女、歌の礼はいへど、答へむなしうありけり。さる国人たち、いくら心のままものをいへど、まめに取り合はぬは、いかに不思議なりとて、男、また式に向かひけり。
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