時は春のある日、学びに疲れはて、ふとんにもぐりて寝たれば、男、怪しき夢みけり。男、はるかなるボストンの国にて旅立ちたれど、用もなかりければ、いとつれづれに道をここやかしこ行きけり。
されば、ふと、混みあひたるひろばにて、ある女の姿を見て、顔なむえ見えざれど、不思議に心ひかれにけり。男、女の顔見むとて、向かひて歩き出づれど、女、逃ぐるやうに男をそむけてゆきけり。人ごみかきわけ後を追へど、女ぞ遠ざかりてばかりありける。ひたみちに走れど、追ひつくべくもあらずと悟りける男、いづこからか、ひとむかし前より世に知らるるうた聞こえてきぬ。あつき思ひをのせける旋律にあはせての胸のときめきをおさへきれず、乾きたる口にて、
ただならぬこの思いよす古き唄夢みみおくる我がメアリアン
といひけるに、男、飛びおきて目ざめにけり。かれなむ気持ちよりも偉大なるものとて、また安らかに眠りけり。
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