いかなる罪の報い

男、日暮し学びければ、しらずしらず時は春になりぬ。いとませむとて、学びのそのをはなれ、親のもとへかへりけり。社会のいとなみやら物の理やら、ことごとくうち忘れ、男、朝は心ゆくまで眠りて、起きては食ひて、食ひては眠りて、至福のくりかへしなり。されど、学びのそのへもどる日やぢきに迫るころなれば、男、小さき時の思ひ出にうなされぬ。

果てしなく彼方まで広がる室にて無数の生徒ありて、無数のつくゑに向かひて坐りけり。ほとりをうす黄色く照らす灯のもと、生徒たち息を殺してひたすらものを書きてなむありける。数多なるペンのつづる轟きの中、男、書く手を休ませ、かくなむ。

しずけさやペンがスラスラ受験地獄

男、学びなどいたう飽きたれど、学びのそのヘもどらでえあらざりけり。母の泣き顔は耐へかぬとて、男、親の知らず抜け出し、うずきながら古里を後にしけり。

目次

© 2005-6 amake