時が立つにつれ、男、ひらめきあるごとに、日々の暮らし、もの思ひ、世のありさまなど、目にうつるものすべてのこころをよみて、そこはかとなく書きつけけり。されど、国人はおろかなり、むかし旅しける国の人なりとも、こころえがたきものになむありける。
人の目も通るまじき草子にだらだらと字をつづりつなぎける男、ある日、古き雅を知れる人にあひぬ。さる人に草子を見すれば、気に入りたまふか、「天は二物を与へずとは世にも知らるれど、かれなむ二、三物なる」と言ひけるに、男、頭をふりて、かくなむ。
テキトウに言葉ならべて詩人気取り
かくよみて、男、「かれなど一物にもならじ。二分の一こそ相場ならめ」と言ひければ、もの足りぬ思ひをして、自らのさらなる一物はなんぞとて、しばし考へ込みけり。ことも思ひ浮かばざれば、考ふるにつかれはて、つい眠りにつきぬ。目覚むれば、男、はっと悟りにて、かくなむ。
技きわめ世にも知られむ昼寝師
かくて、一物半与へらるとて、男、満足とは言はねど、とりあへずよしとしけり。
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