男、長き月日を経て歌を習ひ、式の解き方を学び、知識こそゆたかなりけれど、男、使ひ道見えず、身のほどを思ひ憂じはて、日の限りなく上り沈むに体をしびれさしけり。
かかれば、時は夏になりぬ。あてなく里を歩きまはれば、のどのいと乾きたるに居酒屋にいたりけり。バーに坐りて麦酒をたのめば、はしにひとり腰かけたる女にぞ気づきぬる。さる女、つややかなる黒髪を背中までのばし、優雅なる細き腕にて頬杖をつきたりけり。前に据える葡萄酒に向かひて、いと奥ゆかしき瞳に哀れなる色を光らしければ、男、情に満ちてのあまり、かくなむ。
哀しげにワインを見つめ誰を待つ
女、顔しかめつつ男を睨みて、あわてて荷物をかき集むれば席を目の届かぬところに移りぬ。ため息つきて、男、麦酒のかはりをたのみけり。
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