男、幼き身にし幾年にもわたりて大和ことばを学びけれど、しばらく使はずあれば、脳から消ゆるを恐れてなむ、国人を求めにとて文をやりける。まもなく人から返しおこされけり。かの人、むかしの国を捨て、男の国に長く住みければ、頭の働きぞあやしからむと見る人あらめど、男、稀有なるものとて、気に入りけり。
ふたり、深う見ゆれどまさしくは意味なき話を好みけり。あるいは浅く見ゆれどまさしくはいと有意義なる話なりけむ。いずれにせ、ふたりしてお茶を大いに飲みながら話にふけりてすぐしぬ。
かかる時、世のありさまなぞ語りたれば、人の「この世なむ数学からなる」とのたまふを聞きて、男、まどひぬ。深くか浅くか、とにかく考へし末、男、「この世なむ愛からならむ」と言ひけり。ふたりして黙りし後、「したがひて」とて男、「愛なむ数学なる」と言へば、かくなむ。
凍てつきし君が心をいかにして温めとかす解を求めよう
人、「我が心なむ超越方程式」と言へば、男、計算機を持たざればあきらめにけり。
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